“政治界のスティーブジョブズ” リークアンユー氏

SINGAPORE-POLITICS

3/22の夜にシンガポールに到着したが、夜中に初代首相リークアンユー氏が亡くなるというニュースがテレビから流れてきた。氏は91歳であったので、政治家の大往生として報道されると思いきや、少し様子が違った。それから何日かしても、ニュースや追悼番組は止まず、四日間程国は喪中になり、タクシーの運転手も本当に悲しそうに氏のことを話し、日本企業の駐在員の方も、「彼は本当の天才」と熱弁を振るう。一体どんな人だったのだろうかと興味を禁じ得ず、少し間は開いたが、(追悼の意を込めて)ブログでまとめてみる。

リークアンユー氏はどんな人だったのか?

1923年にシンガポールで生まれ、WW2時に日本軍に占領された過去

華僑の4世として生まれた氏は、戦争を経験しており、日本軍に占領された経験を持つ。かろうじて生き延びた氏は日本軍の施設で翻訳作業などに従事しながら、終戦を待った。その際に日本軍が治安維持の為に行った暴力行為(勧善懲悪的暴力行為?)は氏にとって辛い経験であったが、後に回顧録でも以下のように触れている。

私は、刑罰では犯罪は減らせない、という柔軟な考えを主張する人は信じない。これは戦前のシンガポールではなく、日本の占領下とその後の経験で得た信念である。

とスーパーマンの様な経歴だが、厳然たる経歴である。氏は一体何を行ったのであろうか。

「東南アジアの奇跡」シンガポール

追放されて建国されたはずの国がGDP成長率30,000%

シンガポールはマレーシア連邦から半ば追放されるような形で独立を果たす。独立当時のGDPは10億ドル程度であったが、2014年のGDPは3000億ドル超のすさまじい経済成長を遂げた。一人当たりGDPは427ドル→55,000ドルで驚異的としか言いようがない。

天然資源を持たない、水さえ手に入りずらいシンガポールの戦略

シンガポールは資源のない国である。石油はおろか、水さえマレーシアからの輸入に頼っている。シンガポールが取った戦略は「金融大国になる」ことである。外国から大量の投資資金を呼び込むことに成功した。投資が成功した要因は、いくつかあるが、

などが挙げられる。

治安が良いのは、刑罰が厳しいから

日本でも唾はき罰金10万円などで有名だろうが、シンガポールには、気絶するまで鞭で打つ「鞭打ちの刑」という、とんでも刑罰が存在する。前述の通り、厳しい刑罰が犯罪の抑止力になるというリー氏の意向にそったものだ。

一党独裁が政権の安定性を生み、選挙の為の票取り政策に陥らず、長期的な判断ができた

シンガポールでは政府の決定に伴う開発のスピードがすさまじい、先日もクラークキーエリアという川沿いの賑わったエリアを訪れたが、そこは5年前までただの倉庫街だったらしい。政府の鶴の一声で一気に人気の観光地へと変貌を遂げた。別名「明るい北朝鮮」とも言われるシンガポールは、政権が非常に安定している。政権交代による、事業環境の変化のなさが投資家から歓迎され、また短期的な票取り政策を行わず、長期的な視点で政治判断ができていることもシンガポールの特徴と言えるだろう。

外観の小綺麗さは、アジアでは異色

シンガポールの町並みを眺めて気づくのは、まず電車が全くない。全て地下鉄なのである。そして電柱もなく、電線は全て地下に埋まっている。道端にあるのは一定間隔ごとにある街灯だけで、上空からみると、美しいコンピューターの基盤のようであった。そして、ヨーロッパにいた私の私見だが、何というかヨーロッパを意識した街並になっている。ヨーロッパほど歴史はないので、古さの混ざったお洒落さはないが、街が小綺麗で、心地いい。外国人を誘致する上でこの環境はとても大事であっただろう。

他の東南アジア諸国と違い、100%資本で外国企業が参入できる

同行した人の又聞きではあるが、他の東南アジア諸国では、合弁企業でないと、外国企業は参入出来ないそうだ。しかし、シンガポールは特定のルールさえクリアできれば、資本100%で外国企業が参入できる。今、日本の飲食業界などはこぞってシンガポールに出店を行っている。

考察1:一党独裁とベンチャー企業

パンをつぶして、捨ててしまう企業の話

私が大阪でお世話になっているベンチャー企業の壁には「○○パン禁止!」の張り紙がある。特定のメーカーのパンを買ってはいけないというルールだ。ルールを破ると、社長にパンをペチャンコに潰されて捨てられてしまう。初めて見たときは「クレイジー過ぎる」と心から思った。ないしは、そのメーカーに恨みでもあるのだと邪推していた。ある日、何故あんな貼り紙をしているか尋ねると、「意味がわからなくても、守らなければならないルールがある。ということを教える為」と回答していた。

そこに1つの真理があると思った。もちろん、全て理路整然と、社員に説明責任を果たすことが出来ればベストだろう。「何故これこれの売り上げをやるのか」「こういう理由で、こうしてください」だが、全ての人が納得のいくルールや説明、環境というものが残念ながら存在しない。もちろん働く人によい環境を作るのは経営者の役目である。だが過度な社員ケアはベンチャーでは諸刃の剣になりかねない。経営者のリソースが分散してしまうからだ。

独裁はスピードを生む

衆愚に陥ってしまうと、末期のアテネの様に機能不全に陥ってしまう。時には経営者の号令のもと圧倒的なスピードで事業展開を行う必要があるだろう。そんな時独裁企業は強い。スピードと勢いがあるのだ。その大阪の会社は、すさまじい勢いで伸びている。

ただし規模と共に開かれたルールが必要

ただし、規模が拡大するにつれ、そうもいかなくなるのだろう。公正明大さが必要である。あの貼り紙がいつか剥がされる日がくるのか、来ないのか非常に興味がある( 笑)

シンガポールは建国されてわずか50年ちょっとで信じられない発展を遂げてきた。発展中で市民の生活も潤っている限り、政府への批判・非難はおきにくいだろう。シンガポールが今後どんな舵取りをしていくかもまた、見ものだと思っている。

考察2:10年ぶりの反論

個々人の生産性がそれほど高いとは思えないが豊かな日本

ある日新幹線を降りる際に、思わず呑気だなと思った。木曜の19:00頃だったが、乗車中のビジネスマンのほとんどは寝ているか、スマホでゲームをしているか、ビールを飲んでいるかだった。起業してみてわかったがお金を稼ぐことは大変である。途上国と比較して、こんなに呑気な感じで会社や彼らの生活は成り立つのか不思議だった。日本は何故豊かなのだろうか。

資本主義と資本力

日本国内にお金がたくさんある。だから日本は豊な国である。という仮説が今は最も納得がゆく。いわんやシンガポール。昔は外資を導入することで何故経済が発展するのか理解できなかった。今は感覚的にわかるが、資本力のある会社ほど、選択肢が多く、投資の生産性が高い。

10年ぶりの反論

学生時代バーテンのバイトをやっている時に、常連だった某自動車メーカーの部長さんをカンカンに怒らせたことがある。その方は、元々本社の部長だったが、子会社の経理部長へ転籍になった。当時何も知らなかった私だが、その方にポジティブな気持ちを伝えようと、過去に聞きかじった「確か、企業の花形は財務ですものね。すごいですね!」と伝えた。

すると、「誰だそんなことを言ったやつは、バカじゃないのか」と顔を真っ赤にして怒って、その後30分程お説教を頂くこととなる。当時の私は経理も財務も同じだと思っていたわけだ。

ただ、10年ぶりにそのことを思い出したので、あえて反論してみると、「財務」はとても大事だと思う。集めた資金の運用方法は企業経営の中でも最も重要ではないだろうか。シンガポールは積極的な外資の誘致に成功し、国が潤った。しかしただお金を集めただけではそれで終いである。リー氏は集めた資金を的確に投資してきた。小さな独裁政府による、スピーディーな投資だ。GDP成長率30,000%というだけで、非凡な財務能力だったと頷かざるを得ない。

まとめ

ちょっと急ぎ足の記事作成だったので粗さがあることはご勘弁頂きたい。素人のつぶやきであるのだ。日本にもこの様なリーダーが出てくることを宝くじが当たるような確率で願いながら、リークアンユー氏のご冥福をお祈り申し上げる。

2015/04/02

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